技能実習生(外国人材)受け入れ後の注意点・チェックすべき点とは
~法令等の違法性チェックや環境整備について~

公開日:2023.10.16

技能実習生(外国人材)を受け入れる企業は、技能実習法をはじめ関連する法令を遵守する必要があります。技能実習法に定められている禁止行為や勤怠・賃金に関する注意点をまとめました。技能実習生の環境整備に関する注意点とあわせて見ていきましょう。

技能実習生(外国人材)を受け入れる企業には、技能実習法をはじめ関連する法令を遵守した対応が求められます。ルールを把握していなかったために、気づかないうちに違法行為を犯していることのないよう、十分に注意しておかなくてはなりません。

今回は、技能実習法(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)に定められている禁止行為や、勤怠・賃金について注意すべきポイントを紹介します。技能実習生の就業・生活環境を整備する上での注意点にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。

技能実習生(外国人材)受け入れ後に注意すべき点

技能実習生とは、技能実習制度にもとづき日本国内の企業で「実習」を行う外国人材のことです。技能実習生は労働者として就業するというよりは、技能や技術を学んでもらい、出身国の経済・技術の発展に貢献することを目的としています。

技能実習生の受け入れ機関(企業)は、技能実習法をはじめ関連する法令を遵守し、技能実習生が適切な環境下で実習を進められるよう配慮する必要があります。技能実習生本人や送り出し機関・監理団体との間でトラブルが生じることのないよう、十分に注意しなければなりません。

技能実習法に定められている禁止行為

はじめに、技能実習法に定められている主な禁止行為を確認しましょう。次に挙げる行為が見られた場合は、受け入れ機関に罰則が科せられる場合があります。必ず確認した上で、法令を遵守した受け入れ体制を整えることが大切です。

1.技能実習の強制(技能実習法第46条)

最も注意が必要な禁止行為は、「技能実習生の意思に反して技能実習を強制してはならない」というルールです。技能実習生の受け入れ機関にとって最も重い罪とされ、違反すると1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金が科せられます。

たとえば、暴行や脅迫、監禁といった不当な手段によって技能実習生を拘束してはなりません。技能実習生の人権に関わる重要なルールのため、十分に注意を払いましょう。

2.賠償予定(技能実習法第47条1項)

技能実習に関する不履行について、技能実習生本人やその親族その他の関係者に違約金や損害賠償を請求することを予定する契約の締結は禁止されています。たとえば、「技能実習期間中に職務を放棄した場合、当社は損害賠償を請求する可能性がある」といったルールを設けてはなりません。

実際、留学と就労が一体となった雇用契約を締結し、日本語学校を退校した場合の違約金を定めた契約を締結していた事業者が書類送検された事例 もあります。賠償予定は技能実習法だけでなく、労働基準法第16条にも抵触する事案のため、罰金や違約金・損害賠償等の請求に言及するルールを定めていないか今一度チェックしましょう。

3.強制貯蓄(技能実習法第47条2項)

技能実習生に対して貯蓄を強要したり、貯蓄額の管理を行ったりする契約を結ぶことは禁止されています。たとえば、技能実習生が私生活でお金を無駄遣いしていないか逐一チェックしたり、現在の貯蓄額を報告させたりするルールを定めていると、強制貯蓄に該当しかねません。

プライベートでのお金の使途や私有財産について企業が関与できない点は、日本人の労働者を雇う場合とまったく同じです。こうした私的な事情に受け入れ機関が立ち入る行為は、重大な人権侵害であることを十分に理解しておく必要があります。

4.在留カードの保管(技能実習法第48条1項)

受け入れ機関が、技能実習生の旅券や在留カードを保管・管理する行為は禁じられています。紛失・盗難リスク等を回避するためによかれと思って保管していたとしても、技能実習法違反となりますので十分に注意してください。

在留カードの保管は、技能実習生に業務従事を強制したり、国内での移動を制限したりする行為と見なされます。旅券や在留カードは必ず技能実習生本人に保管してもらい、実習監理者が保管・管理することのないようにしましょう。

5.外出制限等(技能実習法第48条2項)

受け入れ機関は、技能実習生の私生活を制限してはなりません。外出を制限するなど、技能実習生が自分の意思で行動することを不当に制限する行為は禁止されています。

たとえば、技能実習生の外泊を禁止するルールを受け入れ機関が独自に定めることはできません。技能実習に支障をきたす恐れがあるといった理由から外泊・外出に関するルールを定めていたとしても、私生活の制限に該当するので注意してください。

技能実習生の勤怠や賃金に関する注意点

技能実習期間中は、技能実習生の勤怠や賃金に関するルールを遵守する必要があります。とくに注意が必要なポイントを確認しておきましょう。

1.技能実習日誌を必ず作成する

技能実習生を受け入れるにあたり、監理団体の指導にもとづく技能実習計画を作成することになります。受け入れ機関は、技能実習計画に沿って技能実習が実施されていることを管轄する技能実習機構に報告しなければなりません。

技能実習期間中は必ず「技能実習日誌」を記載し、従業させた業務内容や指導した事項を記録しておく必要があります。技能実習指導員の方が記録し、確認印を押すよう徹底しましょう。

2.賃金の支給を遅滞なく行う

技能実習生への賃金の支払いは、支給日に間違いなく履行する必要があります。支給金額が雇用契約通りになっているか、各種控除額に誤りがないか、入念にチェックしてください。

日本人の従業員を雇用する場合と同様、賃金の支払いが遅れたり支給金額に誤りが見られたりするのは非常に大きな問題です。労働に対して賃金を支払うことは、受け入れ機関にとって義務であることを念頭に置き、遅滞なく確実に支給しましょう。

3.技能実習生間で労働時間や賃金に差をつけない

複数名の技能実習生を受け入れる場合、人によって労働時間や賃金に差をつけるのは望ましくありません。技能実習生から不満が噴出したり、トラブルに発展したりする可能性があるからです。技能実習生の待遇は公平にし、格差が生じることのないよう注意してください。

技能実習生同士は仕事内外でコミュニケーションを取り合い、情報交換を行っているケースが少なくありません。労働時間や賃金に差が生じていれば、高確率で不満の種となり得ることを認識しておきましょう。

4.最低賃金を下回っていないか

日本人の従業員を雇う場合と同様、技能実習生に支給する賃金が最低賃金を下回ってはなりません。最低賃金を下回る労働契約は無効と見なされ、最低賃金で契約を締結したことになるため、契約締結時に地域の最低賃金を必ず確認しておく必要があります。

とくに最低賃金の改定時には注意が必要です。契約締結時には最低賃金以上の条件を設定していたとしても、改定時にはあらためて確認することを忘れないようにしてください。

5.同一労働同一賃金の原則に従う

日本人のパート従業員など、技能実習生と同じ職務内容の従業員との間に賃金の格差が生じていないか確認しましょう。同一労働同一賃金の原則にもとづき、同じ職務に従事している従業員と賃金の差がつかないように考慮する必要があります。

同一労働同一賃金の原則は、対象となる従業員が日本人か外国人かによって適用されたりされなかったりするものではありません。技能実習生も同一労働同一賃金の対象となる点を押さえておきましょう。

6.必須業務・関連業務・周辺業務のバランスを考慮する

技能実習生が従事する業務は、必須業務が全体の2分の1以上、関連業務が2分の1以下、周辺業務が3分の1以下と割合が決められています。いわゆる雑務ばかりを頼まれてしまい、技能や技術を身につけるための必須業務に十分携われないといった状況にならないよう注意が必要です。

技能実習生は、あくまでも「研修生」として業務に従事しています。労働者として雇い入れているのではなく、技能・技術を習得してもらうことが目的であることを忘れないようにしてください。

7.技能実習計画の申請内容通りの現場で実習を行う

監理団体の指導にもとづいて作成された技能実習計画に則り、申請内容通りの現場で実習を行うことも大切なポイントです。申請内容と異なる現場で業務に従事させることは禁止されていますので、配属先や業務内容を決定する際には技能実習計画を必ず確認しましょう。

技能実習計画通りに実習が履行されない場合、監理団体や送り出し機関の信頼を損なう恐れがあります。受け入れ機関が個別に問題視されるだけでなく、国際的な問題に発展する恐れもあるため、技能実習計画の申請内容を遵守してください。

技能実習生の環境整備に関する注意点

技能実習期間中は、技能実習生が安全で快適な生活を送れるようサポートする必要があります。環境整備の面で受け入れ機関が考慮すべきポイントを押さえておきましょう。

1.日本語の習得に役立つ環境を提供する

技能実習生にとって、日本で就業する大きな目的の1つは日本語の習得です。実務を通して日本語を学ぶだけでなく、日本語の習得に役立つ工夫を施していく必要があります。

たとえば、日本人の従業員にとって問題なく読める社内文書であっても、技能実習生の日本語能力によっては難解に感じるケースは多々あるでしょう。漢字にふりがなを付けたり、必要に応じて言葉の意味や使い方を噛み砕いて説明したりすることは、とくに現場で求められる配慮です。従業員にも協力してもらい、技能実習生の日本語習得に役立つ環境になるよう努めましょう。

2.健康状態に留意する

技能実習生にとって、慣れない土地での暮らしは不安に感じることの連続です。体調が優れない時や、ケガをしてしまった時などに、言い出せないまま働き続けている可能性も否定できません。普段と様子が違うところがないか、健康状態を常に気にかけておくことが大切です。

また、体調が優れない場合はどの医療機関を受診すればよいのか、症状をどう説明すればよいのかなど、わからないことが数多くあるでしょう。必要に応じて医療機関に同行するなど、不安を解消するための配慮が必要です。

3.人権侵害行為がなされないよう現場に周知徹底を図る

技能実習生を受け入れる趣旨を上層部が理解していても、現場の従業員に十分理解されているとは限りません。現場で暴言や暴力といった人権侵害行為がなされないよう、周知徹底を図る必要があります。

企業として技能実習生を受け入れることにした経緯や、受け入れの目的を十分に説明し、従業員の理解を得られるよう、教育・研修 を行うことも大切です。また、ハラスメントなどの禁止行為についても具体的に説明し、人権侵害行為を未然に防ぎましょう。

4.実習生間でのトラブルに注意する

複数名の技能実習生を受け入れる場合、実習生間でのトラブルが発生しないよう注意してください。よくある例として、実習生間での物品や金銭の貸し借りがトラブルに発展する場合があります。技能実習生の私生活を制限しない範囲で、一定のルールを設けておく必要があるでしょう。

もし技能実習生の間で不穏な動きが見られるようなら、適宜ヒアリングを行うなどして状況を確認し、必要に応じて指導することも大切です。技能実習期間中、実習に集中できる環境を整えることは受け入れ機関にとっての義務であることを十分に認識しましょう。

5.生活習慣の違いや文化の違いに配慮する

技能実習生は多様なバックグラウンドをもっています。国や地域によって生活習慣が異なるため、日本人の従業員にとっては当たり前のことでも技能実習生にとっては難解に映る場合もあるでしょう。ゴミの分別ルールなど、一つひとつの生活習慣を丁寧に説明してください。

ただし、日本での慣習を無理に押し付けないよう注意しましょう。信仰上の理由により食べられないものがあるなど、やむを得ない事情を抱えていることも想定されます。相互理解が重要であることを念頭に置き、技能実習生の考えや意見を尊重することが大切です。

定期的にレクリエーションや地域交流の機会を設ける

技能実習生が職場や地域に溶け込みやすい環境を整えていくためにも、定期的に交流の機会を設けることをおすすめします。社内でレクリエーションを開催したり、地域の方々と交流する機会を設けたりすることで適切なコミュニケーションを図ることができ、相互理解を深めることができるでしょう。

技能実習生を受け入れるにあたり、言葉の壁や文化的背景の違いなど、さまざまな要因から相互理解が進まないことも想定されます。お互いに働きやすい環境を整えていくためにも、定期的にレクリエーションや地域交流の機会を設け、コミュニケーションを図ることが重要です。

まとめ

技能実習生の受け入れは、受け入れ機関・送り出し機関・監理団体が連携・協力しながら進めていくべきことです。受け入れる企業がルールを守り、技能実習生が過ごしやすい環境を整えられるよう努めていくことは、送り出し機関や監理団体との信頼関係を築いていく上でも重要な意味をもっているのです。

技能実習生を受け入れた後の注意点も含めて、技能実習制度の活用を検討している事業者様はぜひエイジェックグループにご相談ください。外国人材受け入れサポートBPOでは受け入れ後に必要となる法的講習も含めて実施しているため、ルールに則った受け入れ体制を整えやすくなります。また、自社雇用ではないサプライヤーや協力会社(下請業者)で業務に従事する外国人材に関しても、法令を遵守した適正な管理が必要です。「外国人材適正受入れ支援センター」では、外国人材を雇用する企業・取引先・サプライヤーのすべてにおいて法令や環境・人権への配慮を含む国際規範等が守られるよう、トータルにサポートいたします。外国人材を受け入れた後の対応も見据えて、エイジェックグループの「外国人材受け入れサポートBPO」「外国人材適正受入れ支援センター」を活用されてはいかがでしょうか。

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